<野家啓一氏のデリダ理解について>               高井雅弘

 野家啓一氏のデリダ理解は間違っていた。彼の『言語行為の現象学』において、「デリダの鍵概念である『反復可能性』は、多くの点でオースチンの『慣習』概念と重なり合うものをもっている。」と書いているが、一面、彼の理解は当たっているが、「不ー可能なもの可能性」を考慮していない。この概念は慣習を越える性格を持っているからだ。この点に関しては、例えば、デリダのLe monolinguisme de l'autre,p.25.参照。